研究内容
キーワード:テラヘルツ科学、光・電子物性、超高速物理学
テラヘルツ波
テラヘルツ波は、周波数100 GHz - 10 THz、波長30 µm - 3 mmの電磁波のことであり、ちょうど電波と光波の中間領域にあります。そのため、発生・検出が困難でした。最近、電気的アプローチと光学的アプローチによって発生が可能となってきており、様々な応用が展開しています。 例えば、テラヘルツ波の、水に吸収され金属に反射されるという性質を利用して保安検査やバイオイメージングなどに利用されつつあり、今後もその応用範囲が拡大すると考えられています。 また、基礎研究では、特に光学的アプローチによる電場強度の大きいテラヘルツ波のパルスを利用して、特異な現象を誘起する研究が盛んに行われています。 南研究室では、テラヘルツ波の発生素子の開発、電場強度の高いテラヘルツ波の発生方法の開発、半導体のキャリアのピコ秒領域のダイナミクス計測、テラヘルツ波を使ったイオンや電子の超高速駆動、キャリアダイナミクス計算など、テラヘルツ波やフェムト秒レーザーを中心にした研究に挑んでいます。テラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)の光学系
テラヘルツ科学
エレクトロニクスにおいて、光と電子の相互作用が超高速化への発展を担ってきました。 最近、信号処理速度の限界を突破するために光の情報処理への応用がさらに加速しており、 研究段階ではグラフェンと光ナノ導波路からなる光スイッチや、数百ギガヘルツの超高繰り返し周波数をもつマイクロコムが実現しています。 これらのキャリア制御には、光の振幅・偏光・光子エネルギー(波長)を利用したものが大半です。 キャリア制御に光の電場を利用したものには、時間幅がアト秒(10-15 秒 - 10-13 秒)の少サイクルパルス光(パルスの包絡線の中に数周期の電場の振動が納まっている状態の光)によってグラフェンや誘電体薄膜中で電子を動かし、その信号を電気的に捉えたという研究がありますが、 その数は非常に少ないです。 その理由は、パルス光の時間幅が光の周期と同程度となって電場の性質が顕著になる超短パルス光を安定してCEP(carrier envelope phase)制御しながら発生させるのが技術的に難しく、大掛かりな設備と操作が必要となることや、パルス光の時間幅を短くするために光の周波数を高くすると光子エネルギーが高くなり、そのために物質内のキャリアが光励起されてしまうため、光の電場の効果を利用するのが原理的に難しくなるためです。 そこで、南研究室では、テラヘルツ波を発生・検出する技術を発展させてエレクトロニクスにおける超高速化を目指します。テラヘルツ波ポンプ・テラヘルツ波プローブ分光法によるキャリア密度のサブピコ秒分解計測
超高速イオニクス
テラヘルツ波は、その光子エネルギーが低くキャリアの光励起を起こしにくいため、事実上、電場の効果をキャリアとの相互作用に利用できる最短時間・最高周波数の電磁波です。 テラヘルツ波のこのような性質を利用して、キャリアやイオンを実空間で動かす研究を行います。 特に、イオニクス(電解質内のイオンの制御技術)においてはテラヘルツ波の電場を利用してピコ秒という短時間でイオンを駆動できることが明らかになったのですが、 テラヘルツ波の照射下でのイオンの詳細なダイナミクスは明らかになっていません。 テラヘルツ波の照射によって動いたイオンを電流として計測したり、テラヘルツ波の透過スペクトルをサブピコ秒の時間領域で計測したり、また、シミュレーションするなどして、 このイオンのダイナミクスを明らかにします。 そして、超高速イオンダイナミクス(超高速イオニクス)を発展させます。テラヘルツ波照射下の超イオン伝導体内の可動イオンのダイナミクス?